【北京、台北時事】中国軍で対台湾作戦を担う東部戦区は23~24日の日程で、台湾を取り囲む形で大規模な統合演習を始めた。台湾の頼清徳総統が20日の就任演説で、中台統一を明確に拒否する発言をしたことに反発した。「台湾独立勢力への懲罰と外部勢力への警告」と説明しており、米台の軍事的協力を強くけん制する狙いがある。
演習開始の発表を受け、台湾国防部(国防省)は23日、「地域の平和と安定を破壊する挑発だ」と非難した。同部によると同日、台湾周辺で軍艦15隻と海警局の船16隻の活動を確認。演習に参加した軍用機は延べ49機で、うち35機が台湾海峡の中間線を越えるなどして台湾側に進入した。頼政権下の中台関係は、米国や同盟国の日本も巻き込んで、軍事的緊張が一層高まることが確実な情勢となった。
東部戦区によると、軍用機や艦艇などによる「統合的な作戦遂行能力」を確認するため、台湾海峡と台湾本島の北部、南部、東部の周辺で実施。陸海空軍のほか、ミサイルを扱うロケット軍が参加している。中国国営中央テレビは専門家の話として、港湾封鎖で台湾のエネルギー輸入を阻止するとともに、米国や同盟国の対台湾支援ルートを断ち切ることなどが演習の目的だと伝えた。
台湾が実効支配する金門島など、中国大陸に近い離島の周辺も演習区域に設定。海上警備を担う中国海警局も23日、離島沖で艦隊の訓練を行った。中国側には、台湾の離島を奪取する構えを見せることで頼政権を威圧する狙いがありそうだ。
中国軍は2022年、ペロシ米下院議長(当時)の訪台に反発し、台湾包囲の大規模演習を実施。弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾するなど緊張が高まった。23年4月には台湾の蔡英文総統(当時)の米国訪問に対抗し、台湾を囲んで演習を行った。同8月にも副総統だった頼氏の訪米に対し、演習で威嚇した。
頼氏は就任演説で「中華民国(台湾)と中華人民共和国は互いに隷属しない」と明言。中国の軍事活動は世界平和への戦略的課題と見なされていると指摘し、日米などとの連携を強める姿勢を示した。「一つの中国」原則を掲げる習近平政権は頼氏を「頑固な独立派」と敵視し、中台が別々の国だとする「二国論」を展開したと批判している。