苫小牧市は「子育て世代に手厚いまち とまこまい」を実現しようと2024年度、産前産後から青年期に至るまでの子育て支援に力を注ぐ。市の姿勢を内外に示すことで、若い世代に選ばれるまちを目指す。24年度予算案は「みらいへつなぐ予算」をキーワードに掲げ、人口減少社会対策と共に子ども・子育て応援を重点配分した。
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子ども・子育て応援は▽複数人の子どもを育てる世帯への保育園などでの副食費の無償化▽子どもの医療費の助成▽産前産後のケア―の従来事業三つの拡充を核とする。
中でも子どもの医療費助成は、現行で未就学児までとしている通院医療費を、8月から高校3年生まで拡大する。入院や訪問看護の上限も現行の中学3年生から高校3年生まで広げ、所得制限も撤廃して子育て世帯の負担軽減を図る。事業費は1億2730万円を計上している。
また、保育施設や幼稚園で3~5歳児に掛かる副食費の無償化も、対象をこれまでの第3子以上から第2子まで拡充。市は800人程度が該当すると試算し、2660万円を計上した。
さらに「プラス1(ワン)」の子育て支援策として、中学に進学する子どもに制服購入費を助成する新規事業も計画。すべての子どもに1万5000円を助成する道内でも珍しい取り組みで、事業費2340万円を盛り込んだ。10月ごろの事業開始を目指す。
このほか、大人に代わって家庭内で家族の介護や育児などを担う18歳未満の子ども、いわゆるヤングケアラーを支えるための新規事業や、保育施設や一部の放課後児童クラブへの冷房設備設置なども展開する予定だ。
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15年度にスタートした市子ども・子育て支援事業計画に基づき、市はこれまでも多様な子育て支援策を実施してきた。子育てしやすい環境を整えて少子化対策につなげるためで、24年度はこれをさらに加速させる一年となりそうだ。
一方、市が昨年11、12月に小学生以下の子どもの保護者向けに行ったニーズ調査で、子育て環境や支援策に対する満足度は未就学児、小学生の保護者共に、前回調査の18年度と比べて低下した。支援策を手厚くしてきたにもかかわらず、満足度が下がった点について、市子ども育成課は「低下した理由は現時点では分からない。今後、詳細な分析を進めたい」と話す。
市内双葉町で子ども食堂を運営して多くの親子と接し、自身も子育て中の辻川恵美さん(43)は「子育て支援の中心にいるのは子ども。子どもたちの意見を聞くことが今、求められているのでは」と指摘する。国もこども家庭庁を新設し、子どもの意見を大切にした政策に臨む姿勢を示す中、「苫小牧でもこの視点に立ち、子どもたちが望む事業を見極め、進めてほしい」と訴える。
(姉歯百合子)