年々時が早く過ぎると感じるようになった。専門家によると、人は初めての経験をすると印象に残って時を長く感じ、何事にも慣れてくると印象に残ることが減って時を短く感じるらしい。要は生活に新鮮味が乏しくなったのだろうか。
気付けば同級生が少しずつ減っていて、子どもの頃や青春時代を話題に「そうそう、それでさ…」と一緒に盛り上がれる顔触れや機会が限られてきた。若い人に話すのもいいが、同世代と話すような高揚感や共感は得られない。
結局、長く生きるほど面白いことは減るということかもしれないが、苫小牧市の料理家で、独自レシピを本紙で紹介する足立洋子さん(72)は違うよう。自身の一人暮らしについてつづり、先日扶桑社から出版された著書「さあ、なに食べよう?70代の台所」には、「なんでもないことをいかに自分が面白がれるか。毎日どこかに”楽しい!”を見いだす暮らしを続けたい」とあった。
取材でお会いする時の足立さんはいつも生き生きしている。「同じ毎日で…」とつまらなさそうな顔をしているより、何だかんだ面白がって生きた方がずっといいということだ。何でもないことを面白がれる柔らかい頭と心。これがあれば時の流れは緩やかになるのだろう。(林)