自民党は15日、派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けて安倍、二階両派の国会議員82人や選挙区支部長3人を対象に実施した聞き取り調査の報告書を公表した。安倍派でキックバック(還流)の政治資金収支報告書不記載が始まった経緯について「20年以上前から行われていた」可能性を指摘。「派閥幹部の責任を問う回答は数多かった」と記した。
岸田文雄首相(党総裁)は首相官邸で記者団に「客観性、中立性に最大限配慮した報告書」と評価。報告書を踏まえ、説明責任をどの程度果たしているかも見極めた上で、党則に基づく処分を判断する考えを示した。
聞き取りは議員ら85人に8派閥・グループの責任者8人(2人は重複)を加えた91人を対象に実施。報告書は安倍派の不記載開始の経緯について、「判然としないものの、遅くとも十数年前から行われていた可能性が高い」と指摘した。二階派に関しては「少なくとも10年前から」と記した。
2018~22年の不記載額は85人で計5億7949万円に上った。このうち、パーティー券販売のノルマ超過分の還流を受けていた「還付方式」が53人、超過分を派閥に納めず中抜きしていた「留保方式」が16人、両方式の併用が16人だった。
85人のうち39人が現金、30人が銀行口座、12人が現金と銀行口座で不記載分を管理。現金は事務所の金庫や引き出しで保管していた。4人は不明と答えた。
不記載分は53人が「使用していた」とし、使途は懇親費用、車両購入費、書籍代、人件費、手土産代、弁当代、旅費・交通費、翌年以降の派閥パーティー券購入費用などだった。「政治活動費以外に用いた」「違法な使途に使用した」と答えた議員は1人もいなかったという。
一方、31人が「使用していなかった」と答え、理由は「不明朗な金銭だったから」が13人で最多だった。派閥執行部に対しては「上に立つ人間が責任を取らないといけない」「安倍晋三元首相がやめると言った制度を復活させた幹部の責任問題」などの「痛烈な批判」が出たという。
聞き取り調査は1月29日、首相が実施を表明。森山裕総務会長ら党幹部6人がチームを組み、全国会議員対象のアンケートと並行して2月2日から進めていた。
報告書は聞き取りに同席した弁護士7人が取りまとめた。7人は「議員や秘書が問題意識を持ちながら、裏金として使用可能な金銭の招来を防げなかったことは重大だ」として不正行為への厳罰化などを提言した。