岸田文雄首相は30日、衆参両院本会議で施政方針演説に臨んだ。自民党派閥の政治資金規正法違反事件を受けた政治改革について「信頼回復に向け、先頭に立って必ず実行する」と表明。能登半島地震の復興に全力を挙げる意向を示した。賃上げを通じたデフレからの「完全脱却」も掲げた。
首相は演説で、政治改革に関する党の中間取りまとめに触れ、派閥について「真摯(しんし)に反省し、お金と人事から完全に決別する」と強調。野党との協議を経て規正法改正など法整備を進めると説明し、「国民の信頼回復を果たして政治を安定させ、重要政策を実行する」と述べた。
再発防止の具体策への言及はなかったが、首相は29日の国会審議で、会計責任者だけでなく議員本人の責任も問う「連座制」について「各党と議論したい」と語り、党内調査にも意欲を示した。今後、首相の「本気度」が問われることになる。
能登地震は演説の冒頭で取り上げ、「異例の措置でもためらわずに実行する」と述べた。自身がトップを務める「復旧・復興支援本部」の新設を打ち出し、「被災者の帰還と被災地の再生まで責任を持って取り組む決意だ」と訴えた。
経済に関しては、昨年の春闘の実績や最近の株価上昇を挙げ、明るい兆しがあると指摘。「デフレから完全脱却するチャンスをつかみ取る。国民に成果を実感してもらう年とする」と宣言した。
6月の所得税・住民税減税にも触れ、「あらゆる手を尽くし、物価高を上回る所得を実現する」と表明。「賃金が上がることは当たり前という意識を社会全体に定着させる」と語った。
憲法改正については「あえて自民党総裁として申し上げれば」と前置きし、「総裁任期中に実現したい思いに変わりはない。今年は条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速する」と意気込みを示した。
外交では4月の国賓訪米に関して「日米関係を拡大・深化させる」とし、韓国を含む3カ国連携を前進させると力説。中国とあらゆるレベルで意思疎通を重ね、拉致問題では日朝首脳会談実現へ自身直轄で協議を進める考えを改めて示した。
◇きょう(31日)から代表質問 26日に召集された今国会は、29日に「政治とカネ」をテーマに衆参予算委員会で集中審議を行う異例の開幕となり、施政方針演説など政府4演説はずれ込んだ。4演説に対する各党代表質問は31日に始まる。