先日、よく遊びに来ている中学生の男の子2人が「きょうはいぶり勧学館に泊まる」とのこと。寒いから駄目だと言っても、準備をして親の承諾も得てきたと。どうしてもと言うので、冬休み中だし少し帰りが遅くなるくらいは大目にみることにしました。他の子たちが帰った後、2人はコンビニでカップ麺を買って満足そうに食べていましたが、いよいよ帰るという頃になって「このまま泊まる」と不動の構えです。
その時、私は小学生の頃に父と登った大雪山の主峰「旭岳」での出来事を不思議と思い出しました。登山靴を買い、万全の準備を整え、その日は天気も良く、登山は順調に進んでいました。しかし、山頂まで残り100メートルを切った辺りで強く冷たい風が吹いてきて、大きな石もごろごろとあり、私の足は完全に止まってしまいました。父は「あと90メートルだよ。もうちょっとだよ」と言って必死に励ましてくれましたが、結局、そこで下山することになりました。
2人にこの話をして「その後、おやじは僕になんて言ったと思う?」と聞き、「答えは、山頂がもう見えていたくらいなのに、そこで無理せず引き返すことができるなんて、とてもすごいぞ!って、下山中ずっと褒めてくれたんだよ」と伝えました。すると、少し驚いた表情をした後、「よし帰るか!」と家に帰っていきました。
彼らを見送って、もう一つ思い出したこと。それは、旭岳下山中に足元に広がった雲の眺めの爽快さでした。
(いぶり勧学館館長・苫小牧)