車のライトに照らされた道路を、ヒグマ3頭が堂々と横切っていた。10月1日夜に苫小牧市桜坂町の住宅地近くで撮影された動画。本紙に提供してくれた男性が家族と車で帰宅する途中、クマと出くわし、車内から妻が20~30メートル先の光景をスマホで撮った。親子とみられるクマはすぐに西側のやぶに姿を消したというが、男性は「学生時代によく通っていた道でクマを見るなんて」と驚く。
2021年にもクマの目撃が苫小牧署に通報された場所。当時は1人の目撃だったが、今回は9月30日から2日連続、複数人が通報を寄せた。市環境生活課の武田涼一課長は「映像のインパクトは大きく、対策を強めた」と明かす。市は町内会とも連携し、通学時間帯の朝と夜にパトロールを続けた他、爆竹や忌避剤を使ったクマよけの対策も進めた。結果、クマが餌場として執着している可能性は低いと判断し、現在はパトロールは終えている。本紙電子版で男性提供の動画を公開したところ、13日時点で4100回を超える視聴回数を記録。市民の関心は高い。
◇
苫小牧署によると、同署管内(東胆振1市4町)では今年1~11月、クマ目撃の通報件数は100件ちょうどで、前年同期と比べて12件上回っている。内訳は、苫小牧市44件(前年同期比13件減)、むかわ町29件(同23件増)、白老町10件(同2件減)、安平町9件(同4件増)、厚真町8件(増減なし)。
同署地域課長の松藤直哉警部は「テレビや新聞でクマの出没が頻繁に報道されているため、目撃した人が『通報しよう』と考えてくれるようになっている」とみる。巡回中の署員がクマに出合うリスクもある中、「目撃情報の共有を徹底し、仮に出くわしても慌てないように、前もって意識するよう促している」と強調する。
◇
今年はクマが冬眠に向けて準備する10、11月、東胆振の各市町で目撃件数が前年実績を上回った。北海道猟友会苫小牧支部の荒木義信支部長は「夏の猛暑でドングリが不作。クマは食べ物を探して活発に動いていたと思われ、目撃情報も多かったのでは」と分析する。
例年であればクマは現在冬眠に入り、再び動き始めるのは翌年3月末~4月上旬だが、荒木支部長は「餌が十分に得られなかった個体が、早めに動き始める可能性がある」と警鐘を鳴らす。市は今年、クマの目撃が特に多い郊外の国道や道道沿い計2カ所に大型の注意看板を設置した。付近は山菜採りをする人が多いエリアで、来年も引き続き警戒が必要とみられる。
(河村俊之、陣内旭)