若い世代を中心とする狩猟への関心の高まりから免許取得者が増加する一方、実際には狩猟をしていない「ペーパーハンター」も増える傾向にある。クマをはじめ深刻化する鳥獣被害対策として捕獲者の確保が課題となる中、企業などで経験の浅いハンターらに機会を与える仕組みづくりが進んでいる。
環境省によると、2019年の狩猟免許保持者は計約21万5000人と、10年間で約3万人増加。30代以下は09年の2倍を超える約3万人に上った。ただ、狩猟に必要な登録をしている人はここ数年6割程度にとどまり、活動をしていない人も多い。
鳥獣による農作物被害に加え、今年はクマが人を襲うケースも相次ぐ。狩猟管理学が専門の伊吾田宏正酪農学園大准教授は「狩猟者の母数は増えているが、クマなどの捕獲には一定の技術がいるため若手ハンターの質を向上させることが必要だ」と指摘する。
こうした状況を受け、小田急電鉄は22年、農作物被害に悩む農家と若手ハンターをつなぐ事業を開始。会員になると狩猟に必要な道具を借りることができるほか、地元猟師らから指導を受けながら、わなを設置するなどの経験を積める。
同社によると、今月14日時点で約270人が入会した。発案者の有田一貴さん(31)は「若い人に狩猟に関心を持ってもらうことで、裾野が広がればいい」と力を込めた。
販路拡大への取り組みも進む。十勝管内上士幌町のスタートアップ企業「Fant(ファント)」は、ハンターと飲食店をマッチングするアプリを開発した。飲食店が客に提供したい野生鳥獣を入力すると、ハンターが狩猟する仕組みで、現在約1700人、約150店舗が登録している。
同社は今年、農家がアプリ上でハンターに直接捕獲を依頼できるシステムも開発。9月には札幌市内で実証実験を行い、今後は他の自治体での活用も予定している。高野沙月代表は「若いハンターの悩みをデジタルトランスフォーメーション(DX)の力で解決したい」と意気込んだ。