世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害者救済に向けて、自民、公明、国民民主の3党は21日、教団財産の海外流出を防ぐための監視強化を柱とする特例法案を衆院に提出した。一方、立憲民主党と日本維新の会も同日、解散命令前の財産保全措置を可能にする特別措置法案を提出。両案の隔たりは大きく、今後の修正協議は難航しそうだ。
自公国案と立維案の対立軸は、解散命令前の財産保全の合憲性と法案の実効性だ。立維案は、宗教法人の解散命令請求などがあった場合、裁判所は保全処分を命じることができるとした。
これに対し、自民党の世耕弘成参院幹事長は21日の記者会見で「憲法の財産権と整合した法律を出さなければいけない」と述べ、立維案は違憲の可能性があるとの認識を示した。国民民主の玉木雄一郎代表も「憲法上の疑義が拭いきれない」と語った。
こうした指摘に、立民の長妻昭政調会長は会見で「全く間違いだ」と反論。「財産の保全命令を出す判断は裁判所に委ねられている」として、問題ないと強調した。
自公国案では、不動産処分の際に管轄行政機関に事前通知することや、被害者が訴訟に向けて日本司法支援センター(法テラス)に相談しやすい体制づくりも盛り込んだ。
ただ、長妻氏は自公国案について「(財産)保全がセットでなければ、実効性が伴わない」と批判。維新の音喜多駿政調会長も「財産散逸を防げるかと言えば、むしろ助長してしまう可能性もある」と疑問を呈した。
衆院法務委員会は24日にも、両法案の審議を始める見通しだ。
与党は国民民主と、3年間の時限立法とした与党案の期限延長を可能にするなどの修正で20日に合意し、野党の分断を図った。こうした動きに対抗するため、立民、維新両党はそれぞれ財産保全を可能とする特措法案と宗教法人法改正案を提出していたが、21日になって立民案を軸に一本化することで一致した。