静岡県で1966年、みそ製造会社の専務一家4人が殺害され、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さん(87)=釈放=の再審第3回公判が20日、静岡地裁(国井恒志裁判長)であった。事件の約1年2カ月後にみそタンクから見つかった血痕の付着した5点の衣類について、検察側は「犯行着衣で被告のものだ」と再び主張した。
タンクから発見されたのは、ねずみ色のスポーツシャツ、白の半袖シャツ、鉄紺色のズボン、白のステテコ、緑のパンツ。検察側は、血痕の付着状況などから、5点が「犯行着衣として自然だ」とした上で、「事件前に被告が着用していた衣類と酷似する」などとして袴田さんのものだと訴えた。
また、半袖シャツの右袖上部に付着した血痕と、事件後に袴田さんの右上腕部にあった傷痕の位置関係がおおむね合っていることから「犯行時に着用していた」と主張。衣類が1年2カ月間発見されなかった点については、タンクに入れた後にみその原料が追加され、重しが載った状態で醸造されたためだとし、事件直後にタンク内を調べなかった理由として製造会社から強い要請があったことを挙げた。
衣類は捜査機関が捏造(ねつぞう)したとする弁護側の主張については、作業量が大規模で発覚するリスクも高いことから「非現実的で、実行不可能だ」とした。次回公判は12月11日。
袴田さんは80年に死刑が確定。第2次再審請求差し戻し審で東京高裁は今年3月、再審開始を決定。決定で同高裁は、1年以上みそに漬ければ衣類に付着した血痕の赤みは消失するとした弁護側の実験結果の信用性を認め、捜査機関による捏造の可能性に言及した。