【エルサレム時事】イスラエル軍は15日、地上侵攻しているパレスチナ自治区ガザで、地下にイスラム組織ハマスの司令部があると主張するガザ市最大規模のシファ病院に部隊を突入させた。病院内の特定のエリアで「精密かつ標的を絞った作戦」を行っていると強調。AFP通信は、戦車や特殊部隊が敷地内に侵入したと報道。ロイター通信は軍高官の話として、病院内で武器が見つかり、「ハマスがテロ本部としていた具体的証拠もあった」と伝えた。詳細は後で公表するとしている。
病院攻撃は国際人道法に反するが、イスラエル軍は「ハマスのテロ活動がここから指揮されていることを示唆する情報がある」と指摘。「軍事目的で使っている以上、国際人道法上の特別な保護を失う」と正当化している。ネタニヤフ首相も15日、「シファには入らないだろうと言われたが突入した。ハマスの殺人者が安全に隠れる場所はない」と言明した。
軍の声明によると、突入前には爆発物を発見したほか、「テロリストと遭遇し、殺害した」という。軍は作戦に先立ち、病院内に潜んでいるとされるハマス戦闘員に投降を呼び掛けていた。
中東の衛星テレビ局アルジャジーラによれば、イスラエル軍は緊急病棟や産科病棟などを入念に捜索し、医師らを尋問。病院に身を寄せている避難民らを金属探知機で検査した上で、中庭に集めているとの情報もある。病院内にいる人は英BBC放送の取材に、院内は完全にイスラエル軍の制圧下にあり、「(現在は)銃撃は起きていない」と話した。
国連の推計では、病院内には患者や避難民、医療従事者ら少なくとも2300人が残されているが、実態は不明だ。イスラエル軍の攻撃が激化すれば、民間人の死傷者が増える恐れもある。
ロイター通信によると、ハマスは、軍事目的で病院を使用しているというイスラエル側の「偽りの主張」を受け入れ、攻撃を承認したとして米国を非難。一方、シファ病院での作戦を受け、米国家安全保障会議(NSC)の報道担当官は「病院への空爆を支持しないし、院内での銃撃戦を見たくない」と語った。