市民参加演劇(4) 鈴木(すずき)龍也(たつや)

  • ゆのみ, 特集
  • 2023年11月11日
市民参加演劇(4)
鈴木(すずき)龍也(たつや)

  このコラムが皆さまの目に留まっているまさにきょう(執筆中はまだである)、苫小牧市文化会館で午後5時半から苫小牧市民参加演劇「グッドバイ」の上演は本番を迎えている。

   出演者やスタッフは、朝いちで会場入りし、本番への準備を整えている。舞台を仕事としている者なら、プロとして作業を進めるのだが、そうではない私たちは仕事との両立になるので、どのメンバーも時間のやりくりがとても大変である。

   「須藤夏菜子さん」。自分が知る市内の演劇人の中でも特に演劇に情熱をささげている女性である。鳥嶋清嗣郎さんから苫小牧市民参加演劇祭実行委員会を引き継いだ群’73代表で、仕事をしながら実行委員会の代表を務めている。彼女は役者として活動し、事務や多方面との調整、稽古場での関係者のケアなども担うので、途方もない激務を命を削ってこなしている。

   身近で見ていると、鳥嶋さんから引き継いだ文化のともしびを、彼女が自身の命を燃やすことで炎にし、演劇に注いでいるから、この演劇祭は成り立っているように思える。もちろん参加者たちも身を削っているのだが、彼女はその中でも身を粉にして奔走している。

   作品は私の責任で上演されるので、内容についてはどんな評価も私が受け止める。しかし、演劇祭そのものは彼女の努力の結晶だ。もしこのコラムを読んでホールに足を運んでいただいたお客さまがいらっしゃるならば、中身がつまらなくとも、彼女への称賛の拍手をぜひお願いしたい。それが次の舞台へ走りだす力にもなるからだ。

  (舞台演出美術家・苫小牧)

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