厚生労働省は10日、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の介護給付費分科会に、2024年度介護報酬改定の基礎資料となる介護事業所の経営実態調査結果を報告した。物価高騰が響き、新型コロナウイルス関連や物価対策の補助金を除くと、22年度は特別養護老人ホームで初の赤字に転落。介護保険22サービス中11サービスで収支が悪化していることが分かった。
介護サービスを提供した事業者に支払われる介護報酬は、3年に1度見直される。24年度改定では物価高や人材不足への対応が焦点となる。政府は調査結果を踏まえ、介護報酬を引き上げる方向で年末に向けて改定率を議論する。
調査は今年5月、全国の介護事業所を対象に実施し、約1万6000事業所から回答を得た。有効回答率48・3%。
サービスの収入額から支出額を差し引いた22年度決算ベースの利益率は、全サービス平均で2・4%と、前年度比0・4ポイント悪化し、19年度決算と並び過去最低だった。コロナ補助金などを含めると3・0%。厚労省は「他産業の利益率が上がる中、かなり厳しい状況」としている。
施設系では、特養がマイナス1・0%で、介護老人保健施設もマイナス1・1%の赤字。物価高による光熱水費や人件費の上昇が収益悪化の要因とみられる。一方、訪問介護は人件費の減少などにより2・0ポイント改善したが、同省によると、職員1人当たりの賃金は上昇しており、人材が流出している実態が浮き彫りになった。