政府は7日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が表明した被害者救済のための最大100億円の国への供託に応じない方向で調整に入った。供託金の算定根拠を疑問視する声も出ており、与党は独自の救済策の策定に向けた実務者協議を進める。
松野博一官房長官は7日の記者会見で、教団による供託について「コメントは差し控えたい。一般論で言えば、供託は法令に規定されている場合のみ行えるものであり、供託が認められるか否かは具体の事実に即して、法令に沿って判断される」と述べるにとどめた。
法務省は「法律に根拠がなく難しい」(関係者)とみている。政府高官は「無理だ」と述べ、別の高官は「教団が銀行口座の残高を毎月公表すればいいだけだ」と話し、教団が求める「制度の用意」にも否定的な考えを示した。
自民、公明両党も教団の提案に取り合わない構えだ。両党の幹事長と国対委員長は7日、国会内で会談し、教団の発表にかかわらず、両党実務者でつくるプロジェクトチーム(PT)で議論を続けることで一致。PTは同日、今月中旬の救済策取りまとめを目指すことを改めて確認した。
自民内では「潜在的な被害を合わせれば100億円では足りない恐れがある」(関係者)との見方も出ている。世耕弘成参院幹事長は会見で「100億円の根拠が分からない」と疑問視した。梶山弘志幹事長代行は「わが党は昨年(教団と)一切関係を持たない方針を決定している」と強調した。
被害者救済の原資となる教団財産の散逸を防ぐため、立憲民主党と日本維新の会はそれぞれ強制力のある財産保全法案を衆院に提出している。野党も教団の方針に冷ややかだ。
立憲の安住淳国対委員長は7日の党代議士会で100億円の供託について「一言で言えば財産保全法は勘弁してくれということだ」と批判。菊田真紀子衆院議員も衆院本会議で「財産保全法の一日も早い成立が必要だ」と訴えた。
維新の音喜多駿政調会長は会見で「教団の意見には賛同し難い。宗教法人法改正による財産保全を引き続き強く求める」と強調。国民民主党の玉木雄一郎代表は「(教団に)惑わされては駄目だ」と語り、共産党の小池晃書記局長も「反省のない姿が浮き彫りになった」と批判した。