全国の自治体で職員が業務中に着用する名札の表記をフルネームから名字のみに切り替える動きが広がっている。職員の個人情報がインターネット上で検索されたり、公開されたりするのを防ぐ狙いだ。市民からの不当な要求や行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」対策の一環で、応対時の内容を録音するためボイスレコーダーを配備する自治体も出ている。
佐賀市は、SNSで職員が氏名を検索され、「○○に行っていたよね」と声を掛けられたり、SNSからメッセージを受け取ったりした事案が確認されたため、2021年9月から、窓口業務を担う部署などで名札表記の名字のみへの変更を試行。今年4月に全職員に対象を広げた。職員の責任感向上を目的にフルネーム表記にしていたが、人事課は「名前だけで個人情報が特定されてしまう時代。職員の生活を守らなければいけない」と説明する。
千葉県いすみ市は9月から、全職員を対象に名字のみの表記に改めた。特に被害が出ていたわけではないが、「不安を感じる職員がいるので、事前に対処することにした」(総務課)という。岡山市も10月から名字のみに変え、顔写真をなくした。市では、窓口で職員が来庁者に名札を撮影され、「顔と名前をSNSにさらす」と言われた事案があり、トラブルに巻き込まれるリスクを減らすため見直すことにした。
愛知県あま市は6月、市民から不当な要求を受けた際などに会話の内容を録音するため、ボイスレコーダーを全課に配備した。人事秘書課によると、市民からは「職員の態度が悪い」といったクレームが寄せられることがあるほか、「職員の対応に非があり謝罪しても、度を越えた対応を求められることもある」という。
ある自治体関係者は「SNSの普及などで時代が大きく変わっている。職員の安全を守り、安心して仕事ができる環境を整える必要がある」と話した。