橋がつなぐ新たな世界 杉本(すぎもと) 大志(まさし)

  • ゆのみ, 特集
  • 2024年9月3日
橋がつなぐ新たな世界
杉本(すぎもと) 大志(まさし)

  瀬戸大橋、明石海峡大橋、しまなみ海道。四国の雄大なつり橋が海峡をまたぐ姿を初めて目にした時、僕は息をのみました。北海道育ちの僕にとって、この光景は異世界でした。

   車内から見える橋の支柱は天を突き、ケーブルは大海原を優雅に舞う鳥の翼のよう。遠くかすむ対岸は、まるで夢の国への入り口です。

   アクセルを軽く踏むと、車は滑るように橋を渡り始めました。眼下の紺ぺきの海に陽光がきらめき、潮の香りが漂いました。

   この橋を渡れば、四国から本州へ。さらには九州や東京へも自分の車で行ける。そう思うと、胸が高鳴りました。かつては船や旅客機でしか渡れなかった難所を、今や車で軽々と越えられる。この利便性と自由さに心が躍りました。

   橋上からの絶景に見とれていると、あっという間に対岸に到着。振り返り、遠くにかすむ四国の山々を見た瞬間、僕の中で何かが変わりました。

   橋は単なる構造物ではない。新たな世界への扉であり、人々の暮らしを豊かにする希望の象徴なのだと実感しました。もちろん、台風や天変地異が起きれば三つの橋は閉ざされます。それでも、本州と結ばれているという安心感は現代でしか享受できない、とてつもないものだと十分に理解しました。

   北の大地で育った僕が、南の海を越え、日本中を縦横無尽に駆け巡ることができる。そう思った時の喜びと感動は、きっと生涯忘れることはないでしょう。

   橋がつなぐのは、陸と陸だけではない。人と人、過去と未来、そして夢と現実をもつなぐことに気付かされました。

  (苫小牧工業高等専門学校准教授)

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