採 血 苫小牧市保健センター看護師 前田まや

  • ハスカッププラザ通信, 特集
  • 2024年8月20日
採 血 苫小牧市保健センター看護師 前田まや

  今回は採血についてお話しします。通常の定期健康診断では、採血管3本分の採血をします。たくさん採っているように見えますが、全量10~15ミリリットル程度で大さじ1杯くらいの量ですので、それほど多くの血液を必要としないことが分かっていただけると思います。

   採血そのものはすぐに終わりますが、採血結果には身体の変化を知り、病気を未然に防ぐための大切な情報が隠されています。主に貧血や炎症などを知ることができ、腎臓・肝臓の異常、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病のリスクを推測することもできます。

   食べ物に含まれている糖質や脂質は全身のエネルギー源となるため、食後は血糖や中性脂肪の値が上昇します。食後に血液検査をして血糖や中性脂肪が高い場合、もともと数値が高い傾向にあるのか、食事の影響で高くなっているのか判断がつかず、せっかく受けていただいた検査で正しく評価できないことがあります。

   ハスカッププラザでは、検査前日から当日にかけて、あめやガムを含む食事や水以外の飲み物は10時間前から控えていただくよう、ご案内しております。健康診断を受ける前には、飲食についての注意事項が記載された書類をご確認の上、検査を受けていただくようお願いいたします。

   続いて、採血の合併症についてお話しします。神経損傷と聞くと怖くなってしまうかもしれませんが、約1万から10万回に1回の頻度で起こるとされています。腕の表面付近の神経がどのように位置しているかは個人差が大きいため100%防止する方法は現在のところ見つかっていません。

   通常の採血では、太い神経の断裂の可能性は低く、損傷は軽度で痛みやしびれなどの症状が1週間から3カ月ほどで改善し、一時的な場合がほとんどです。

   そのほか、採血で気分が悪くなってしまう原因の一つに「血管迷走神経反射」というものがあります。血管迷走神経反射とは、恐怖心や緊張、痛み、ストレスなどを感じた際に、身体を落ち着かせようとして血圧低下や脈拍の減少などが起こり、一時的にめまい、吐き気、失神などを起こす反応のことをいいます。この反射自体は、通常、横になり安静にしていると回復するため健康上大きな問題になることはありませんが、転倒によりけがをしてしまう可能性があるため注意が必要になります。

   採血や注射で気分が悪くなられる方や一度でもそういった経験がある方は、採血を安全に行うためにベッド上での採血をお申し出ください。特に、健診当日は絶食や緊張などから普段よりも体調変化を起こしやすい状態となっていることがありますので、少しでも不安に感じる方は迷わず健診スタッフに相談することをお勧めします。

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