白老町を含め全道20カ所にある江戸幕末期の北方警備の拠点「陣屋」跡の現状と課題について情報共有するシンポジウムが28日、町中央公民館で開かれた。各地の史跡保全関係者14人がそれぞれの陣屋の現状を紹介し、今後の陣屋の研究や史料の共有、人的交流について意見を交換。実現に向けて陣屋を介したネットワークが現場レベルで構築された。
白老町、町教育委員会主催。仙台藩白老元陣屋資料館の開館40周年記念事業。白老町の町制施行70周年記念の関連事業。町民ら約50人が参加した。
シンポジウムに先立ち、北海道博物館の三浦泰之学芸部長が「東北諸藩による幕末の蝦夷地警備」と題して基調講演。幕末期にロシア南下に伴う国境問題が浮上し、幕府は蝦夷地を幕領化した上で東北6藩に警備を命じ、各地に陣屋が形成されたことを説明。「陣屋のあった地で記録を掘り起こし、研究を積み重ねれば、新たな発見がある可能性は大きい」と語った。
この後、「全道陣屋跡の現状と課題~所在市町間における人と情報・史資料のネットワーク構築に向けて」をテーマにシンポジウムを開催。史跡保全に関わる北斗市や函館市、室蘭市など13市町の学芸員や史跡保存会の会員が、それぞれ陣屋の置かれた経緯や現在の保存状況などを説明した。
各地では、地理的位置や建物の構造が分からなかったり、史跡保存に関わる住民有志や専門学芸員がいなかったり、いても高齢化している課題が顕在化していることが判明。白老は資料館、専門職員、地域住民の支援団体を有する特徴的な存在であることが明確になった。
後半は車座になり、今後の陣屋の在り方について議論。仙台藩白老元陣屋資料館の武永真館長は「陣屋(遺構)の存在や意義を道内全体で底上げしたい」とネットワーク構築を提案。賛同が得られた。学芸員らからは「(活動資金源を確保するため)陣屋マップ作成や移動展の開催などの事業を展開しては」「陣屋をテーマとした街歩き企画で存在をアピールできるのでは」と次々に意見が出された。