襟裳岬で東西を見渡すとほんの少し丸みを帯びた「水平線」があり、地球はやはり丸い、と強く実感する。1980年代後半の夏、学生として過ごした東京で「往復交通費支給」とあったアルバイト求人を見掛け、参加した際に確かめた。
昔、えりも町でコンブ漁を手伝う人員を募集していた。漁期盛りの漁家住み込み。道産子の小職は帰省代の大半が賄えると考えて応募し、岬で1カ月余りを過ごして得難い経験をした。磯舟でどっさり取ってきたコンブを干した後に集め、等級別に選別して規格の長さに切り、小屋に収納して出荷に備える仕事をした。
この間、別の漁家に滞在する学生が岸辺で逆巻く波間でおぼれそうになったところを救助した。漁師の親方に食事や風呂を供され、夜に団らんを過ごす生活を共にして一家の喜怒哀楽のそばにいた。
本紙に根室市と相互協力協定を結ぶ東海大の学生がコンブ漁家へ滞在し、作業体験する「昆布漁業体験インターンシップ制度」確立に向けたモニタリングが18日から始まった―との記事が載った。参加者の様子を温かな筆致で伝えている。 コンブ漁がどう行われるか、生活しつつ学ぼうとする前途洋々の若人たちに期待を寄せる。小職の、夏の海を無性に眺めたい性分は今もなお変わらない。(谷)