中央競馬で1996年オークス、秋華賞を勝つなど活躍したメジロドーベル(牝)が、30歳になった今年も洞爺湖町のレイクヴィラファームで元気に過ごしている。サラブレッドでも長寿の域に入っているが、ひと回り以上年下の牝馬や今年生まれた当歳馬と同じ放牧地で、若駒の成長を支えるリードホースの務めもこなしている。
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馬の年齢は、競走馬としてデビュー年にあたる2歳は中学生、ダービーを目指す3歳春は高校生ともいわれる。かつては、若い馬で人間の年齢×4、高齢になると3を乗じた数に相当するといわれていたこともある。いずれにしても馬の30歳は人間なら80~90歳に当たり、メジロドーベルも人間の米寿(88歳)を迎える長寿になる。
競走馬時代のメジロドーベルは96(平成8)年に中央競馬でデビューし、3歳(現2歳)時は阪神3歳牝馬ステークス(現阪神ジュベナイルフィリーズ)を制覇、4歳(現3歳)時にオークスと秋華賞、5、6歳(現4、5歳)時にエリザベス女王杯を連覇しG1を5勝。通算21戦10勝、獲得賞金7億3342万円に上り、名牝として歴史に名を残した。
競馬はブラッドスポーツとも評され、血統が重要な要素を占める。牝馬には母になって後世に子供を残すという役割があり、メジロドーベルのように活躍した馬は血統に優秀な成績が加わり、当然かかる期待は大きい。故郷に戻って繁殖入りしたドーベルは、9頭の子供をなし、2016年に繁殖生活を終え、功労馬として故郷で余生を送り始めた。
競走、繁殖生活を終えたドーベルの馬(人)生第3幕は、リードホースという役割。母馬と今春に産まれた当歳馬の母仔が複数いる放牧地で一緒に過ごす。レイクヴィラファームの的野裕紀子さんは「特に体に悪いところもないですし、(母仔の)群れにいたいというタイプで。群れに入れておいた方が馬も若々しく生き生きしているので、お仕事があった方がいいという感じですね」と言う。夏以降の離乳では、母馬を別な放牧地に移動させる。その際、仔馬の精神的なケアをするのが、ドーベルの役目だ。的野さんは「離乳の際、仔馬は1頭になってお母さんを探し回ることがあるんですが、そこで寄っていってくれる。お母さんがいるときは寄らないんです。ベテランの保母さんです」と頼もしい存在だ。
今も、馬体重は500キロをゆうに超え容姿も若々しい。「おばあちゃん扱いをすると、一気に老けちゃうと思うので、それはしないでいこうということになっています」(的野さん)と、何か人間のようで、ほっこりとした気持ちにさせてくれる。
(フリーライター・大滝貴由樹)