佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長は10日記者会見し、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査を受け入れると表明した。受け入れを決めたのは、北海道の寿都町と神恵内村に続き全国で3例目。玄海町には九州電力玄海原発があり、原発立地自治体が調査の受け入れを決めたのは初めてだ。
10日午前、脇山町長は会見に先立ち、非公式で開かれた町議会の全員協議会で、調査受け入れについて町議らに説明した。脇山町長は会見で「日本全体で考えるべき問題。議論を喚起する一石となれば」との考えから決断したと述べた。調査に応じると国から交付される20億円については、町の財政状況は安定しているとした上で「交付金目的ではない」と強調した。
玄海町議会は4月26日、地元の商工団体が提出した調査応募を求める請願を賛成多数で採択。これを受けて今月1日、資源エネルギー庁幹部が町を訪問して調査実施を要請していた。
町は経済産業省にすでに受諾の連絡をしており、今後は調査に向けた手続きが進められる。北海道の2町村では受け入れの表明から約1カ月後に調査を開始しており、玄海町でも早ければ6月に調査が始まる可能性がある。
文献調査では地質に関する論文やデータを基に最終処分場としての適性を検証する。適性が認められるとボーリング調査を伴う概要調査に進むが、その実施には都道府県知事の同意が必要となる。佐賀県の山口祥義知事は10日、脇山町長の受け入れ表明に対し「新たな負担を受け入れる考えはない」と改めてコメントし、反対の意向を示した。脇山町長自身も「なし崩し的に最終処分場になるものではない」と話しており、今後の行方については不透明だ。