日本臓器移植ネットワークは28日、中国・四国地方の病院で60代の男性が臓器移植法に基づく脳死と判定されたと発表した。脳死判定は1997年の同法施行後1000例目。脳死下の臓器提供は増加傾向にあるが、実際に移植を受けられたのは希望者の3%に満たず、臓器提供者(ドナー)不足が依然として課題となっている。
脳死となった人からの臓器提供が初めて実施されたのは99年。当時は「意思表示カード」などで生前に意思を書面で示しておく必要があったため、ドナーは年間3~13人にとどまっていた。
2010年に改正法が施行され、家族の承諾で臓器提供が可能になり、同年はドナーが人に増えた。その後も増加傾向が続き、19年には過去最多の97人に上った。
移植ネットによると、これまでに移植された臓器は腎臓が最も多く、肝臓、肺、心臓の順だった。心停止後に提供できる臓器は腎臓、膵臓(すいぞう)、眼球に限られるが、脳死後は心臓や肺、肝臓なども可能となる。心臓、肺、肝臓の移植件数は、昨年までの累計が700件を超えている。
ドナーの年齢別(昨年末時点)で最も多かったのは、50代の194人で、40代181人、60代124人と続いた。18歳未満は65人で、うち6歳未満は25人だった。
一方、待機患者約1万6000人のうち、昨年移植を受けたのは約3%の455人。臓器提供の約8割は本人の意思表示がなく、家族の承諾に基づいており、理解が進んでいないことも背景にあるとされる。
移植ネットは「臓器移植は善意のドナーの存在があって初めて成り立つ医療。臓器提供の意思表示について家族などと話し合ってほしい」としている。