静岡県で1966年、みそ製造会社専務一家4人が殺害され、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さん(87)=釈放=の裁判をやり直す再審初公判が27日、静岡地裁(国井恒志裁判長)であった。袴田さんは拘禁反応とみられる症状から出廷を免除され、姉のひで子さん(90)が罪状認否で「弟に代わって無実を主張します」と述べ、起訴内容を全面的に否認した。
公判は少なくとも12回行われ、判決は来年4月以降となる見通し。検察側は袴田さんが犯人だとして有罪立証を進める。再審請求審と同様に、確定判決で「犯行時の着衣」と認定された5点の衣類に付着した血痕の色の変化が主な争点となる。
検察側は冒頭陳述で、事件の約1年2カ月後にみそタンクから発見された5点の衣類は袴田さんのものだと指摘。衣類のうち白半袖シャツの右袖上部に損傷があり、事件後袴田さんも同じ部分に傷痕があったことなどから、「犯行時に着用していた」と主張した。血痕については長期間みそ漬けされても「赤みが残り得る」とし、袴田さんが事件後に衣類を「タンク内に隠したことに矛盾はない」とした。
弁護側は冒頭陳述で、警察や検察による捜査を批判。血痕に赤みが残っていることなどから、再審請求審で5点の衣類は「犯行着衣ではなく捏造(ねつぞう)証拠であることが明らかになった」とし、「速やかに袴田さんを無罪にし、本当の意味で自由な生活に戻すことに力を尽くすべきだ」と訴えた。
公判はその後、有罪が確定した以前の刑事裁判の証拠が改めて調べられるなどした。次回公判は11月10日。
今後の公判では、血痕の色調に関し、複数の専門家による証人尋問などが行われる見通し。
袴田さんは80年に死刑が確定。第2次再審請求の差し戻し審で東京高裁は今年3月、1年以上みそ漬けされることで血痕の赤みは消えるとした弁護側の実験結果の信用性を認めて再審開始を決め、衣類をタンク内に隠したのは「捜査機関の可能性が極めて高い」と指摘した。