絶滅の恐れがあるニホンウナギについて、近畿大は27日までに、人工ふ化から育てた成魚の卵と精子を使って次の世代をふ化させる完全養殖に成功したと発表した。近大はクロマグロの完全養殖を実現し、「近大マグロ」のブランドで市場に流通しているが、ニホンウナギについてはコスト面から商業化のめどはまだ立っていない。
近畿大水産研究所(和歌山県白浜町)によると、ニホンウナギの完全養殖は国立研究開発法人の水産研究・教育機構などが成功しており、近大は大学では初という。
同研究所は昨年9月、人工ふ化で育てたウナギのうち成長状態が良好な成魚に、卵や精子の形成に関わるホルモンを投与して成熟を促す作業を開始。今年7月5日に受精卵が、翌6日には卵からかえって間もない仔魚(しぎょ)が確認された。
ふ化は8月にも確認され、今月18日時点で約600匹が生存している。今後3カ月から半年程度でシラスウナギになり、さらに1年で一般的な食用サイズに成長する見込み。
ただ、現在の技術では仔魚を飼育できるのは小規模な水槽だけで、シラスウナギを低コストで大量生産するめどは立っていない。同研究所の田中秀樹教授は「商業的に成り立つのはまだ先だが、ニホンウナギの持続可能な養殖に向け研究を進めたい」と話している。