政府・与党が物価高への対応を柱とする新たな総合経済対策で、税収増の一部を国民に還元する具体策として、所得税を定額で4万円減税し、住民税が課税されない低所得者世帯に7万円を給付する案が浮上していることが24日、分かった。所得減税は本人のほか、扶養家族1人につき同額の減税を行う方向で調整。減税と給付による還元総額は5兆円規模になる可能性がある。
政府は経済対策の原案を同日、自民、公明両党の政調全体会議に提示。11月2日の閣議決定を目指す。
岸田文雄首相は今月26日に開く政府与党政策懇談会で、両党の税制調査会に国民への還元措置の具体化に向けた早急な検討を改めて指示する。所得税を含む減税の詳細な制度設計は、政府・与党が年末にかけて行う税制改正作業で詰め、2024年の通常国会に税制改正法案の提出を目指す。所得減税の実施は来年夏ごろになる可能性がある。
岸田首相は24日の衆院代表質問で経済対策について「所得税減税を含め早急に検討を進める」と強調した。
政府は今回の経済対策で、日本経済を新たな成長軌道に乗せる「供給力の強化」と物価高を乗り越える「国民への還元」に重点を置く。原案では物価高対策や構造的な賃上げ、投資拡大など5本柱を掲げ、「あらゆる政策手段を総動員する」と明記。財源の裏付けとなる23年度補正予算案については「早期成立に取り組む」とした。原案では所得税減税と低所得者世帯向け給付措置の金額や期間には触れていない。
物価高対策としては、ガソリンなど燃料油価格の高騰を抑えるための補助金や電気・ガス料金の負担軽減策について、期限を年末から来年4月末まで延長する。自治体が低所得者世帯への給付措置に充てる「重点支援地方交付金」を拡大する。
投資拡大策では先端半導体の国内拠点の増強を支援する。地方の成長促進策として高速道路の通勤時間帯割引の拡大も盛り込んだ。
一般ドライバーが有償で乗客を送迎する「ライドシェア」導入を念頭に、地域交通の円滑化に努めるほか、東京電力福島第1原発の処理水放出に伴う風評被害対策も実施する。