11月11、12両日に苫小牧市文化会館ホールで、「苫小牧市民参加演劇」が上演される。現在はその稽古と準備の真っ最中である。深夜までの稽古が続いてぼーっとし、「ゆのみ」の締め切り前日に原稿データを消して慌てたりした。
話を戻し、今年の市民参加演劇では、未完で絶筆となった太宰治原作の「グッドバイ」を劇作家ケラリーノ・サンドロヴィッチが独自の視点で解釈してコメディーに仕上げ、第23回読売演劇大賞最優秀作品賞に選ばれた作品を上演する。
太宰の「グッドバイ」は1948年6月に朝日新聞で掲載が始まり、第2回から第13回まで朝日評論に載った。第11回から13回までの原稿は6月13日にこの世を去った時に発見されたという。
あらすじはこうだ。雑誌編集長の田島という男は、本業の傍ら闇商売で金を稼ぎ、愛人を何人も囲っている。しかし気持ちの変化から足を洗い、編集業に専念し、愛人たちとも別れなければならないと思うようになる。どのようにすればよいか途方に暮れる中、仲の良い文士から助言をもらう。「すごい美人を見つけてきて、それを妻と称して、愛人たちの元を歴訪するんだ。そうしたら女たちは黙って引き下がるだろう」。そして田島は、かつぎ屋をなりわいとする美人、キヌ子と珍道中を始める。そんなお話だ。
稽古は苫小牧市内の雑居ビルで夜な夜な行っている。市民が参加して舞台に挑むこと、市民が舞台作品を楽しむこと、そして何よりまた来年も挑み、来年も見に来ていただくことが、文化不毛の地とやゆされるこの地を変える、一つのすべだと考えている。
(舞台演出美術家・苫小牧)