大人になってから「憧れている人」はいるだろうか。私にはそっと憧れ、こうなりたいな、と思っている年齢は私の倍以上の高齢の方がいる。きょうはその方の話を書こうと思う。
その方とは、とある高齢者が集う場で定期的にお会いするのだが、とにかくすてきなあいさつをされる。例えば、会場の設営をするボランティアの方には「おはよう。きょうも早く来て会場に椅子を並べてくれて、ありがとう」と。集いの場に一緒に参加される仲間には「おはよう。きょうも顔見せてくれて、ありがとう」と。看護師の私には「おはよう。いつも血圧を測ってくれてありがとう」というように、この方のあいさつの最大のポイントは「おはよう+うれしかったことや感謝したいこと+ありがとう」がセットになっていることだ。
ポイントはさらに二つあり、一つ目は、この方が自ら一人一人に声を掛けて歩き回っていること。集いの場に来ても、すぐに腰を掛けず、高齢ゆえに丈夫とは言えない足で真っ先にあいさつに回る。そして二つ目は、基本的に一人一人に合わせて全員に違った言葉を掛けていること。おはようだけではなく、それぞれに応じたおまけが付いていることで、その後の会話も弾みやすくなる。これらを毎回ごく自然になさっている。
あいさつは自然に行っているため、自分はできているように感じていた。しかし、この方のあいさつを聞くようになってからは、まだまだだな、と思っている。声のトーンや礼の角度といったような手技的なものだけではない、本当のあいさつ上級者が、温かな空間をつくっているのだと思う。
(コミュニティナース・苫小牧)