ニホンミツバチの遺伝情報を網羅的に調べる「全ゲノム解析」を行ったところ、国内で三つの集団に区別できたと東北大や東京都立大などの研究グループが明らかにした。これまでの解析では、ニホンミツバチが地域ごとに異なる遺伝子を持っていることは分からなかったという。研究結果は16日までに米学術誌に掲載された。
ニホンミツバチは、昔から国内に生息する在来種で、体長は1センチ程度。生息地の北限は青森県で、北海道や沖縄、一部の離島を除き日本に広く分布している。
研究グループは、東北から九州までの各地で採集した計105匹のニホンミツバチの全ゲノムを解析。その結果、遺伝子の構成は(1)北部(東北から中部)(2)中央部(中国)(3)南部(九州)で異なっていたことが判明した。近畿や四国で見つかったニホンミツバチには、複数の地域の遺伝子が混在していたという。
また、三つの集団に特有の遺伝子を調べたところ、いずれも気温の変化に対応できる遺伝子ではなかった。このため、温暖化による気温上昇に弱い可能性があり、今後の気候変動によってはニホンミツバチの減少につながる恐れがある。また、養蜂や飼育のためにニホンミツバチを移動させた場合、地域によって環境に適応できない可能性もあるという。
東北大の河田雅圭名誉教授は「花粉を運ぶニホンミツバチは、植物にとって重要な昆虫だ」と強調。「より詳しい遺伝子解析を今後も進めることで保全に貢献していきたい」と話した。