出生時の性別と性自認が異なるトランスジェンダーの人が戸籍上の性別を変更する際、生殖能力をなくす手術を事実上の要件とする性同一性障害特例法の規定は違憲かが争われた家事審判で、静岡家裁浜松支部(関口剛弘裁判長)は11日付で、規定を違憲、無効とする決定をした。申立人の弁護団によると、この規定を憲法違反とした司法判断は初という。
2004年に施行された特例法では、性別変更要件の一つとして「生殖腺がないか、生殖機能を永続的に欠く状態にあること」と規定。事実上、生殖腺除去手術を求めているとされる。最高裁は19年の決定で「現時点では合憲」との初判断を示していた。
浜松市在住の申立人(48)は女性として生まれたが、性同一性障害との診断を受け、男性への変更を求めていた。
関口裁判長は決定で、規定について「性同一性障害者が制約を受ける人権の内容や性質、制約の程度は重大だ」と指摘。親子関係に関わる問題発生の可能性などを理由に、意思に反して身体への侵襲を受けない自由を一律に制約することは「人権制約の手段、態様として必要かつ合理的なものとは言い難い」とした上で、現在の社会的情勢などを踏まえると規定は「もはやその必要性、合理性を欠くに至っている」として違憲、無効と判断し、性別変更を認めた。
最高裁は9月、この規定を巡る別の申立人の家事審判について大法廷で弁論を開いた。年内にも出す決定で、社会情勢の変化を踏まえて改めて憲法判断する見通し。