米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事を巡り、斉藤鉄夫国土交通相は5日、防衛省の設計変更申請を知事に代わって承認する「代執行」のための訴訟を福岡高裁那覇支部に起こした。辺野古移設に関する国と県の対立は、再び法廷に持ち込まれた。地方自治法に基づき国が地方自治体の事務を代執行すれば初のケースとなる。
沖縄県の玉城デニー知事が、承認を求める国の指示に期限内に応じなかったことを受けた措置。玉城知事は5日午後、県議会内で記者団に対応を問われ「訴状の内容をよく確認した上で、対応を検討していきたい」と述べるにとどめた。
斉藤国交相は同日夕、首相官邸で記者団に「知事が期限までに承認を行わなかったことは遺憾だ」と語った。
代執行訴訟について、地方自治法は提訴から15日以内に口頭弁論を開くと規定。月内に第1回が開かれ、迅速に審理が進むとみられる。高裁が国の訴えを認め、承認を命じても県が応じない場合、国が代執行できる。
県は最高裁に上告できるが、代執行の効力は失われないため工事は進められる。防衛省は既に護岸工事などの業務の入札手続きを開始しており、11月以降、承認が下り次第作業に着手する方針だ。
代執行訴訟は、国が翁長雄志知事(当時)による辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消しを撤回するよう求めた2015年以来2回目。当時は両者が和解して代執行には至らなかった。
設計変更は、辺野古崎東側の大浦湾で見つかった軟弱地盤の改良のため、防衛省が20年に県に申請した。知事は環境保全策に不備があるなどとして不承認とし、国交相が知事の決定を取り消す裁決と是正指示を出したため、法廷闘争に発展。今年9月4日に最高裁が国の判断を適法と認め、県には承認する法的義務が生じていた。