厚真高校の生徒3人が9日、2018年9月6日に発生した胆振東部地震の被災地を案内するガイドとしてデビューした。町内の吉野地区の被災現場を巡りながら、札幌市内から訪れた高校生ら12人に自身の体験談を伝え、ガイドとしての一歩を踏み出した。
3人は2年生の加藤迅さん(17)と1年生の木村璃空さん(16)、蹴揚葉月さん(16)。町観光協会が今年から乗り出した高校生ガイドの養成に、今春、名乗りを上げた。これまで町の公営塾「よりみち学舎」と協力しながら、防災キャンプに参加したり、東日本大震災で被害の大きかった宮城県気仙沼市を訪れたりして研修を積んできた。
ガイドデビューの相手となったのは、札幌市内を中心に防災啓発支援などを展開する高校生ボランティア団体「BLOSSOM(ブロッサム)」のメンバーらの一行。震度5強を観測し、2人が亡くなった苫小牧市内在住の加藤さんは、団地の9階で地震に遭い、「死にたくない」「まだやりたいことがいっぱいあるのに」と当時思ったことを吐露。くしくも9月6日が誕生日で「幸せな人がいる一方で、悲しい思いをしている人がいると思う日になった」と複雑な心境を語った。心の支えについて質問され、「小さいが明かりがともっていたこと、家族が一緒だったこと」と答えた。
同じく市内在住の木村さんは、電気が使えずにろうそくで家に明かりをともして過ごした。「小さい弟がいる。部屋が暗くて泣いていたので、一緒に遊んで慰めていた」と振り返り、「今は電池を買って備えている」と語った。
厚真町の厚南中学校出身の蹴揚さんは、発災当時、宿泊研修で日高町にいた。地元の被災を知り、「帰りのバスの中の雰囲気は重々しさがあって暗かった」と回想。炊き出しでラーメンを食べた際に「小さな幸せがそこにあり、心が和らいだ」と話したほか、町民を元気づけようと、学習発表会で和太鼓演奏をクラスで披露したことを紹介した。
同年代の被災経験を聞き、ブロッサムのメンバーで市立札幌開成中等教育学校5年(高校2年相当)の黒田菜々花さん(17)は「今までテレビ画面で断片的に見ていただけの震災が、現実のものとして捉えられるようになった。イベントやSNSを通し、いろんな方にこの震災を知ってもらえたら」と気持ちを新たにした。
同協会の原祐二事務局長は「道内ではおそらく初めての高校生の震災ガイド。これからも語り継いでいってもらいたい」と期待を寄せた。