―震災から5年をどう受け止めているか。
「復旧から復興にフェーズ(局面)が切り替わってきており、復興は道半ば、未完了の部分がある。コロナ禍で町内の集いやイベント、活動の自粛を余儀なくされ、町民の意欲やにぎわいの創出に影響があった。復興計画は2025年度までの達成に向けて取り組み、(上位計画の)まちづくり計画も25年度までの前期、まちなか再生、地方創生、タウンプロモーションで歩みを始めた。脱炭素やデジタルトランスフォーメーション(DX)、SDGs(持続可能な開発目標)など社会課題への対応もあった。24年度から復興と創生の段階に移るため、今年度の取り組みは重要になる」
―まちなか再生が穂別地区で始まった。
「達成目標を25年度とし、速やかに実施設計に移したい。住民説明会や出前講座を開いており、可能な限り住民の意見を取り入れる。防災先導型プラス共創を意識し、住民主体で外的支援者の知恵や力を借りて形にしていければ。資材価格や労務費の上昇も頭に入れながら事業展開していく」
―今後の鵡川地区の復興拠点整備について。
「復興創生・共創アドバイザーを迎えて助言を頂いている。鵡川地区は『むかわ四季の館』があり、新しい古民家再生の計画もある中、むかわ版マーケットサウンディング(民間投資意向調査)の手法も検討中。スピード感と住民の合意形成を兼ね備えたエリアデザインの策定に着手したい」
―道内初の「事前復興計画」の策定に向けて。
「鵡川地区の市街地は津波の浸水エリア。24年度中の計画策定に向けて町の現況、被害想定の整理、専門的知見を得る会議が始まった。職員が理解と知見を深めるため先導チームも発足させた。被害想定、発災時から復興期までの課題の分析、復興の基本方針イメージやプロセスの検討、津波避難対策を含めた事前準備を順番に進める」
―心のケアについて。
「心的外傷後ストレス障害(PTSD)の方は少なくなったが、コロナ禍の影響でうつ状態の方が出てきている。人との交流や触れ合いの制約が要因の一つと考え、心の健康状態の把握、回復のための支援、予防を図っている。心の健康アンケートや個別の健康相談、啓発、ゲートキーパー養成講座などを継続し、影響を受けている方に寄り添う体制を構築したい」
―記憶を伝承しようと地元中学生が取り組んでいる。彼らへの期待は。
「災禍を受けたこの町の実態、備え、対処を学ぶ実践に期待している。『町民も一緒に防災を学びませんか』という形で地域防災の機運の醸成にも一役買っているのでは。震災を忘れない、忘れさせないといった、記憶や教訓の伝承にもつながる。若い世代自らが、被災したこと自体を生きる糧として防災を学び、記憶の伝承とともに次世代の若者にも伝えていってほしい」
―「防災先導のまちづくり」が目指すところは。
「震災の経験を捉え直し、命を大切に守りを固めながら、必要な環境づくり、未来につないでいく防災起点のまちづくりの具現化を視点に、各分野で防災先導を意識して取り組みたい。強いまちづくり構造ということで立地適正化計画を作成し、これからの市街地形成に生かす。災害の発生リスクは高まっており、危機に対して各分野で備えていく」
(終わり)