2018年9月6日の胆振東部地震から5年がたった。被害が大きかった厚真、安平、むかわの被災3町は復旧・復興を着実に進め、5年の月日を経て地域の再生に大きく近づいた。一方で、震災の記憶を後世に伝えていく取り組みも今後は重要さを増しており、課題は後を絶たない。
(胆振東部支局・石川鉄也)
■加速する復旧・復興
発災当初、最重要課題として挙げられた住まいの再建は、3町とも地震から3年を迎える前に完了した。道路や河川などのインフラも、国や道から大型の予算を獲得しながら着実に復旧を遂げてきた。土砂崩れでむき出しになっていた山肌は以前より緑が目立ち、時間の経過とともに復旧を実感できるようになった。
町ごとに見ると、厚真町では、農業用水を確保する厚真ダムや日高幌内川など大がかりな河川の復旧を今年度中に終える見通しが立ち、道が賃借して一部使えなかった農地23ヘクタールについても営農できる状態になった。宮坂尚市朗町長は「災害復旧のスピード感についてはどこよりも早かったと思っている。これまで起きた自然災害の復旧作業からの技術的な積み重ね、さまざまな協力の結果ではないか」と評価する。
隣町の安平町ではこの春、早来地区の小、中学4校が統合して復興のシンボル「早来学園」がスタートした。むかわ町では、懸案事項だった穂別博物館と周辺一帯、市街地のまちなか再生を図る「復興拠点施設等整備事業」が始まったほか、25年3月の策定を目指す「事前復興計画」など未来を見据えた取り組みを進めている。
■新たな課題も
その一方、厚真町では被災者向けに建てた新町の災害公営住宅で昨年以降、雨漏りが多発するなど不具合が散見される。町は今秋に埋設排水管整備や屋根の防水塗装工事などを予定しており、不安の早期払拭を図らなければならない。
むかわ町では震災により空洞化した鵡川、穂別両地区のまちなか再生が急がれる。皮切りとなる穂別地区の復興拠点整備事業については、現時点で当初より3億円増の18億円の予算を見込むが、物価上昇による資材高騰は避けられない。新型コロナウイルス感染拡大以降、停滞していたコミュニティーの再構築も3町共通の課題だ。
■震災の記憶、後世に
未曽有の大地震からの大がかりな復旧作業により、震災後の景色は大きく変わった。しかし、復旧で終わりではなく、今月2日の厚真町追悼式で遺族代表の畑島武夫さん(61)が述べたように「災害のないまちづくりを進めることが復旧・復興の総仕上げであり、土砂崩れにより尊い命を失った犠牲者の皆さんに報いること」だ。
5年前の経験を決して無駄にせず、この教訓を生かし、次世代につなげていかなければならない。