旧鵡川町で小学生時代の4年間を過ごした函館市在住の澤村弘美さん(64)が1日、むかわ町役場を訪れ、52年前に町内で借りたまま返すことができずにいた当時の本を竹中喜之町長に返却した。澤村さんは「52年もたってしまったが、これで心の整理ができる」と胸をなでおろした。また胆振東部地震で被災した町の復興に役立ててほしいと5万円を寄付した。
澤村さんは父親の転勤で1967(昭和42)年に旧伊達町(現伊達市)から旧鵡川町に引っ越し、70年まで当時の鵡川小学校に通学。同年夏に町内の施設で夏休みに読もうと本を借りたが、直後に旧上磯町(現北斗市)へ引っ越すこととなり、返すタイミングを逸して町を離れた。その後、むかわ町を訪れる機会のないまま、月日が流れたという。
「昨年7月、『いつかドライブがてら返しにいこう』と言ってくれていた主人が亡くなり、郵送での返却も考えたが、地震で大変だったむかわ町に少しでも役立つことがしたい」と寄付金を直接届けることを決意。友人を誘い、旅行の途中で52年ぶりに町へ足を踏み入れた。
「(自分が住んでいた頃のまちと)全然違うが、当時あったものも一部残っているものもあった」と澤村さん。「今までは主人任せで、自分で遠出をすることがなかったが、(自力で活動することに)自信を持ちたいとここまで来た。そのきっかけをつくってくれたのが本だったのかも」と笑みをこぼす。
竹中町長は謝辞とともに、「まちの復興は道半ばで、これからも頑張る姿を発信していきたい。この本をご縁に今後もお付き合いいただければ」と述べた。
このほか、澤村さんの勤務する函館市の会社からも10万円が寄付された。
52年前に借りた本と善意を持ってむかわ町を訪れた澤村さん(右)