白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)の中核施設・国立アイヌ民族博物館と、北海道大学アイヌ・先住民研究センター(札幌市)は29日、シンポジウム「共生の道をいかに歩むのか」をウポポイ内で開いた。オンラインを含め約200人が参加し、対談や講演を通じてウポポイの在り方を考えた。
両主催者が2020年に締結した学術連携・協力に関する協定による事業。アイヌ文化の復興・創造や差別のない多様な文化を持つ社会構築のため、開業3年を迎えたウポポイがどのように象徴としての役割を果たしていくのかを考えようと実施した。
対談では、同センターの加藤博文センター長と同館の佐々木史郎館長が登壇。加藤センター長はこれまでの研究について、アイヌ民族が関わる機会がないまま研究者によってつくられた歴史観が発信されてきたと指摘し、同博物館では「展示を通じて北海道のアイヌ民族独自の歴史をつくっていくことも役割の一つだ」と強調した。
佐々木館長は開館当初、和人が作った物も展示したことにネット上で疑問の声が上がったことに触れ、「アイヌが手に入れ、独自の解釈で使用しており、アイヌ文化を示す物として欠かせない資料だ」と力を込めた。
同センターの山崎幸治教授の講演では、海外博物館での先住民族の文化展示事例を紹介し「課題や挑戦は世界共通。国外を見て、ウポポイからも発信することで学び合える」と話した。