札幌市円山動物園の人気者、アジアゾウの「パール」(19歳)の出産が迫っている。昨秋に妊娠が判明すると、来園者から「赤ちゃんが楽しみ」「無事に生まれて」などの声が寄せられ、安産祈願のお守りも届いているという。今月に入って陣痛時に見せる行動が確認され、関係者らは子ゾウとの対面を心待ちにしている。
無事に生まれれば、3月の「アフリカンサファリ」(大分県宇佐市)に続いて国内17例目。飼育員が動物と同じ空間に入らない「準間接飼育」では国内初という。
パールを含む4頭がミャンマーから来園したのは2018年11月。半世紀以上飼っていたアジアゾウの「花子」が07年に死んだ後、市民から強い要望が寄せられ、再び飼育が決まった。生態に合わせて広いゾウ舎を新設し、ストレス緩和や飼育員の安全確保のため、国内では例の少なかった準間接飼育を導入。ひづめの手入れや採血といった健康管理を専用の柵越しに行ってきた。
繁殖を目指し、21年3月から5歳下のオス「シーシュ」と同居。昨年10月の超音波検査で、待ち望んでいた妊娠を確認した。担当飼育員の坪松耕太係長は「当初から繁殖成功が目標だったので、妊娠が分かった時はみんなで喜んだ」と振り返る。
出産の際も獣医師や飼育員は柵越しに対応するため、パールの協力が不可欠となる。そこで、難産に備えて、獣医師が体に触れられるよう柵の前で体を固定するトレーニングを導入。舎内に子ゾウ用の設備を作るなど、万全の準備で臨む。坪松さんは「経験がなく手探り。環境を整えることを最重視している」と気を引き締める。
ゾウの妊娠期間は約22カ月とされ、パールの出産は月内と予想している。「元気な赤ちゃんを産んで」と願う坪松さんは、「来園者に子ゾウを見てもらうことで、地球環境や生き物の多様性を守る気持ちになってほしい」と話した。