わいせつな目的を隠して子どもに接近し、手なずける「グルーミング」の被害が後を絶たない。7月の刑法改正で、16歳未満に性的な画像を要求する行為が禁じられたが、SNSに触れる機会が多い夏休みは被害の増加が懸念される。有識者は「子どもの心理につけ込み、要求を断れなくする」と巧妙な手口に警戒を呼び掛ける。
「これまで送ってもらった写真、どうしようかな」。10代半ばの少女は数年前、スマートフォンのゲームで知り合った男にこう脅された。親身に話を聞いてくれていたため、求められるまま写真を送ると要求はエスカレートした。「裸の写真を送って」。これまでに送った写真の拡散をちらつかされ、断れなくなった。写真はその後、SNSで販売されてしまった。
子どもの心理につけ込むグルーミングの手口はさまざまだ。有識者は「まじめと思われるのを嫌う子どもに『まじめだね』と言って断りにくくし、性的画像を送らせる」と指摘。画像を手に入れるまでは、強要したり脅したりせず、気軽な調子で接する手口も多いという。
デジタル性暴力の被害者支援などに取り組むNPO法人「ぱっぷす」(東京)の金尻カズナ理事長は、法改正により、16歳未満への性的な画像の要求が罰せられるようになったことを評価。「大人は、写真を送った行為を責めてしまいがちだ。子どもも大人も、写真を要求すること自体が悪いという認識を持てば、周囲に相談しやすくなる」と語る。
追手門学院大の桜井鼓准教授(犯罪心理学)が昨年までに実施した調査では、20~25歳の男女約1万8000人のうち、18歳までに性的な写真を他人に送ったことがある人は全体の2・4%に上った。性的な写真を送った人の多くがその後、身体的性被害を受けたという海外の調査結果もあるという。
桜井准教授は「2人だけの秘密」などと口止めする行為は性的グルーミングの特徴だとした上で、「早い段階で相手の意図を見抜き、やりとりをやめることが大切だ」と話している。