520人が犠牲となった日航ジャンボ機墜落事故から12日で38年を迎えるのを前に、遺族らは11日夕、墜落現場となった群馬県上野村の「御巣鷹の尾根」の麓を流れる神流川で、4年ぶりに「灯籠流し」を行った。犠牲者に鎮魂の祈りをささげ、空の安全を願った。
「今年もここに戻ってきました」「見守ってくれてありがとう」。遺族らは黙とうをささげた後、大切な故人への思いが詰まったメッセージや絵が書き込まれた発光ダイオード(LED)の灯籠約200個を川に浮かべた。両手を合わせ、流れゆく灯籠を見送った。
遺族らでつくる「8・12連絡会」事務局長の美谷島邦子さん(76)=東京都大田区=は、コロナ禍を経て4年ぶりに行われた灯籠流しに「うれしい」と喜びをあらわした。事故で失った次男健君=当時(9)=に「健ちゃん見ていてね」と語り掛けながら灯籠を流したという。
美谷島さんの講演を契機に、今回は上野村の小学生も参加した。遺族の高齢化が進む中、美谷島さんは「次世代の子どもたちが参加してくれて、少し心が楽になった」と語った。
灯籠流しは1995年から例年8月11日に実施されてきた。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い中止となり、21年からは2年連続で、河原に並べたLEDの灯籠に点灯する行事に変更された。
夫の武さん=当時(56)=を亡くした福田恭子さん(84)=兵庫県西宮市=は、4年ぶりに村を訪れ、灯籠流しに参加した。コロナ禍で身動きがとれない時期が続いただけに、「久しぶりに来た。懐かしい」と感慨深げ。12日は御巣鷹の尾根で武さんに「変わらず元気にしています」と声を掛けるという。
12日は、墜落現場への慰霊登山の後、夜は4年ぶりに遺族が参列して、追悼慰霊式などが営まれる。