身近なレジャーとして親しまれる登山だが、山岳遭難も増えている。昨年は発生件数が初めて3000件を超え、過去最多を更新した。今年も長野県などは昨年を上回るペースだ。11日は「山の日」。捜索救助を担う警察の担当者は「事前準備やゆとりある計画が重要だ」と話している。
警察庁によると、昨年の山岳遭難件数は前年比380件増の3015件。それまで最多だった2018年の2661件を大きく上回り、統計が残る1961年以降で最多となった。遭難者数も3506人(前年比431人増)で最も多く、60歳以上が半数を占めた。死者・行方不明者は327人に上った。
同庁幹部は「新型コロナが落ち着き、アウトドアに行く人が増えたり、山小屋が再開されたりしたためでは」と推測する。
地域別では長野県が284件と最多で、東京都(205件)、北海道(192件)と続いた。東京都は高尾山などが近く気軽に登れることから、登山者数が多いためとみられる。
長野県は今年も8月6日までに167件発生し、前年同期より22件増えた。県警の担当者は「コロナ禍前よりも増加傾向にある」と話す。
北海道も今年上半期で73件(前年同期比31件増)と大幅に増えたが、スキー場外で滑る「バックカントリースキー」による遭難が多く、「夏山シーズンは今のところ、昨年などと比べても少ない」(道警担当者)という。 遭難を防ぐには、徹底した事前準備や基本的なトレーニング、ゆとりある計画が重要になる。長野県警は山岳遭難救助隊長からの「七つのお願い」を公表し、安全な登山を呼び掛けている。
道警担当者は「北海道の山は夏でも気温が低い。防寒具など本格的な装備で、登山計画書をしっかり出して」と注意喚起している。