「これで終わりというのはもったいない」
姉妹都市・八王子市での3泊4日のこども研修事業を終えた児童生徒やスタッフらはそう口をそろえた。
苫小牧市は今年度、本研修以外にも姉妹都市50年にちなんださまざまな記念事業を計画。31日まで、八王子千人同心顕彰碑や勇武津資料館など八王子ゆかりの市内8カ所を巡るスタンプラリーを開催中で29、31の両日には市内小中学校で昨年12月に続き、「八王子ラーメン」を提供する。
市美術博物館は12、13日、八王子が養蚕業で発展した歴史を踏まえ、カイコの繭を使ったワークショップを企画。27日は八王子市郷土資料館学芸員を講師に迎えた講演会を行う。
11月には文化会館などで国の重要無形民俗文化財に指定された八王子市の伝統芸能「八王子車人形」の披露も予定されている。
姉妹都市への理解を深め、まちぐるみで50周年の節目を祝いたい考えで、4~6日に行われたとまこまい港まつりには八王子市の安間英潮教育長らが来賓として参加し、高尾山薬王院と高尾登山電鉄が販売ブースを初出店。同じ日程で八王子まつりには苫小牧市の木村淳副市長らが足を運び、交流の機運を盛り上げた。
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「あの(北海道の)苫小牧からですか」。こども研修事業3日目の7月28日、高尾山に登るケーブルカーで、同乗していた地元の70代男性が訪問団にうれしそうに声を掛けた。児童生徒、スタッフが着ている「苫小牧市こども研修事業」と書かれたおそろいの薄紫色のポロシャツが目に留まったという。
男性は「毎年、苫小牧の人が八王子に来ているんですよ」と自身も関わる「八王子日光苫小牧クラブ」との交流活動に触れ、「今後も長く続けていければ」と願った。
同クラブは市民レベルで姉妹都市交流を―と1997年から毎年4月の高尾山薬王院春季大祭に合わせ、八王子を訪れており、27回目となる今年も有志約15人が苫小牧産ホッキ貝の奉納を行い、薬王院大本堂を参拝し、草の根交流を続けてきた。
高校生スタッフの登別明日中等教育学校6回生、坂本愛緒さん(17)は「八王子千人同心の話も知らない八王子市民が多いと聞いていたが、(研修先で)苫小牧知っているよと声を掛けてくれる人が意外と多かった」と長年の姉妹都市交流の成果に言及。苫小牧北光小5年の原田光希さん(10)は「八王子まつりは楽しそう。いつかぜひ行きたい」と目を輝かせた。
「今後は八王子からのこども研修を受け入れ、互いに行き来する形をつくるのが理想的」。こども事業を苫小牧市から受託したトートー事務機の山口勝次社長はそう述べた。
市青少年課の池田寛課長は「子どもたちは八王子が身近になったと思う。大人になって八王子と接点を持ったとき、『行ったことがある』と胸を張れる」と指摘。市秘書広報課の野村美穂課長補佐は「市民レベルでつながっていくことが大事」と強調した。
実際に現地で見聞きし、肌で感じた姉妹都市の記憶は一人一人の心にしっかりと刻み込まれた。次世代を担う児童生徒たちには友好の架け橋となっていくことが期待されるが、両市は50年の節目を機によりよい関係を見据え、いま一度、子どもらの声も参考に交流事業の在り方を見詰め直す必要がある。
(報道部・樋口葵)