陶芸家の前田育子さん 羽地(はねじ)夕夏(ゆうか)

  • ゆのみ, 特集
  • 2023年8月5日

  雪が積もっていた今年の2月ごろ、白老町在住の陶芸家・前田育子さんの工房に初めておうかがいしました。50代の方で、共通の友人に紹介してもらい、3人で育子さんの工房でお茶をすることになりました。

   育子さんの作品が並ぶギャラリー兼、上薬を付ける前の器が並ぶ制作場所の一角に座らせていただきました。仕事と生活と美的感性が一体になった独特の空気感は、なぜだかとても落ち着きました。20年以上使っているという古いミルで豆をひいたコーヒーをいただきました。物をとても大切にされている方なんだなぁと思いました。

   最近の世間話などから話題は流れ、育子さんの若い頃の思い出をうかがいました。高校生の夏休みに道内をひとり旅した時のこと、旅行かばんを買うお金がなくて、制服のスカートをリメークして作ったのだとか。そこでちょっと危ない目に遭ったり、不思議な出会いがあったり…すごく楽しそうに話をしてくれました。

   今でも交流があります。またたび文庫のイベントに顔を出してくれたり、画集や芸術論集などを買い求めてくれたり、お茶しにうかがったりもします。最近、育子さんから素焼きの白いお皿を買って使っています。どんな物を入れてもなじむし、食べ物がきれいに見えて重宝しています。素晴らしい作家さんで、しかも私に対しても普通に接してくれます。わが道を歩みつつ、物や人との出会いを大切にされる姿勢を尊敬しています。

  (またたび文庫店主・白老)

過去30日間の紙面が閲覧可能です。