地方に住みながら農業と都会の仕事を両立させるなど、多様な人が交流するまちづくり事業「アグリ・スマートシティ」の実証実験が23日まで、安平町内で行われた。ANAグループ、NTTコミュニケーションズ、羽田みらい開発の3社が中心となり2022年3月にスタートした事業。飛行機とICT(情報通信技術)を活用し、町民と都市の企業に勤める参加者らが農業体験やワークショップを通して新たな関係構築を目指した。
地方にとっては交流人口の拡大と移住促進、企業側は研修や人材育成が狙い。5~9日と19~23日の2回行われ、第2期は6事業所から事務局を含む13人が参加。町内の関係団体や住民と交流したほか、施設の見学、地元農家で土づくりやトマトの箱詰めなどを体験した。
参加者からは「全国的な知名度はないが、持っているコンテンツはすごいことが地域に入ってみて分かった」との声が聞かれ、「もっと発信できれば、多くの人と関係を持つことができるのでは」と分析。ワークショップではステークホルダー(利害関係者)の観点も交えた活性化提案もあり、地元関係者は「航空会社ならではの多様な話が聞けた」と振り返った。
ANA総合研究所の森孝司アグリ・スマートシティプロジェクト統括は「事業実現の可否や結果ではなく、意見を出し合ったプロセス、その場で生まれた人と人の関係を大事にし、町内外の人たちが一体感を高めるのが狙い」と説明。町地域活性化起業人の山本拓也さん(29)は「単発ではなく、修正を加えながら継続的に考えたい。イベント化するのではなく、事業を通して町民との接点をつくるなどもう少し踏み込んでいけたら」と今後の広がりに期待した。