白老町陣屋町の史跡「仙台藩白老元陣屋」の北海道遺産選定を記念した特別展「幕末と明治維新を生きた北の防人」が15日、仙台藩白老元陣屋資料館で開幕した。会場には国内の博物館や図書館計7館に収蔵される仙台藩白老元陣屋の絵図面26点が並ぶ。初日は仙台市から郷土史家の佐藤宏一さん(91)を講師に迎え、同陣屋について、たびたび議論される「柵木(さくぼく)」の有無に関する講演会も開かれた。会期は8月13日まで。
同陣屋の絵図面は、町や姉妹都市交流のある仙台市をはじめ、奥州市や盛岡市、函館市、札幌市と各地に散らばり、現存数は他藩、他陣屋に比べて群を抜くという。同資料館の関係者は「陣屋設置の意義を幕府に納得させるために仙台藩にとって多くの図が必要だったのでは」とみる。
絵図が描かれた時期は1855(安政2)年から65~68年の慶応年間までと幅広い。陣屋造営以前に白老が警衛の拠点として優れた地であることを説明するために描かれた地形図、陣屋の設計用図面、建物の大きさや藩士の配置などが詳細に描かれた絵図には、使用目的に合わせて違いがみられる。
佐藤さんは「柵木不在説の素性」と題して講演した。土塁を囲むように築かれ、陣構えを成す「柵木」は、絵図面で描かれながらも同陣屋には存在しなかったとみる向きがある。これについて、仙台藩士の玉蟲左太夫(たまむしさだゆう)が記録した「入北記」の記述を取り上げ、「出来(しゅったい)ス」という部分を「出来(でき)ズ」と解釈した可能性を挙げた。また、土塁が経年劣化で削られるなどして柵木のくいを入れる穴が消えてしまった可能性も指摘。「警備上の常識から考えても柵木がなかったと断定するのは難しい」と述べ、来場者は熱心に耳を傾けていた。
午前9時半~午後4時半。入館料は高校生以上300円、小中学生150円、白老町民は無料。月曜休館。問い合わせは同資料館 電話0144(85)2666。