「奨学金返済苦 自殺動機に」。先日の全国紙朝刊1面の見出しだ。警察庁などが2022年の自殺者の動機を調べたところ、少なくとも10人は奨学金返済を苦にしたものであることが分かったそうだ。進学に伴う費用は、受験期前後のものに注目が集まりがちだが、借入型の奨学金の返済は卒業後の大仕事。就職して月々の給料からの返済は、若者たちにとっては命懸けの大きな負担のようだ。
年少の友人の奨学金返済苦にホロッとさせられた経験がある。給料の残りをポケットに入れて暮らしていると、つい使い過ぎてしまう。彼は使わない方法を思い付いた。確か、生活費と小遣いの残額を次の給料日までの日数で割った額だけを毎日、封筒に入れ胸のポケットに収める。飲み会の計画があっても「参加はこの封筒が決めます」と決意は固かった。返済は計画通り進んだだろうか。子ども2人の仕送りに追われていた頃の話。返済の支援や保証人でもある自分の責務を考えると腹の底からは笑えなかった。
国は奨学金制度の改革を進める方針で来年度から返還額の減額制度の利用条件を緩和する。しかし、すでに延滞している人への支援ではなく、延滞金と合わせ一括返還は必要とか。子育て支援の近くにはまだまだ深く大きな落とし穴。(水)