価格が上がり続けている食品類。野菜については、資材や電気代のほか、原料となる肥料の値上げが関わっている。
肥料の国内シェアの大半は全国農業協同組合連合会(JA全農)が占めており農家に安く安定供給するため、国内外から調達している。ただ、輸入肥料は近年、ロシアによるウクライナ侵攻などで品薄になり、価格をたびたび上げてきた。それで農家の生産コストが上がり、影響が出荷品の価格に及んでいる。
日本の食料自給率は38%。先進国中最低水準とされるが、国産食料の中に輸入肥料を使って作っているものが含まれているとすれば、この数字はもっと低いことになる。その中で、採算の悪化した農家が「もうやっていられない」と生産量を減らしたり離農したりすれば、国産食料の確保は極めて難しくなる。
輸入品は、輸出国の事情でいつ途絶えるか分からない。それが食べ物に関わる物なら国民の生命に直結し、どの国も自給量と輸入量のバランスに神経を使っているはずだ。不穏な海外情勢が続き、国力増強を意識し始めると、視点は軍事力に向きがちだが、農地をはじめ、農業の人材や技術を備えた食料自給力も国力の一つ。しっかりと手だてを講じ、力を高める必要性を感じている。(林)