〈極地で独りテントの中で眠りに落ちようとする時に聞こえる『音楽』に誘われ、夢うつつのあわい(間)に飛んで行く。生の世界に死を意識的に引き寄せる冒険や探検の世界。そのあわいに身を置くことで、生はより一層、きらめきを増す〉。北極冒険家の荻田泰永さんが本紙に連載した「冒険家の本棚」最終回の第15回は今月5日、印象深く結ばれた。
つい先週、白老で1泊2日のキャンプをした。午後集合、翌日午前解散のつかの間、集まるのは小職を含む50代の男3人。このうち1人が経験豊かなキャンパーで、必要な情報や低め予想の気温に適する持ち物のリストを事前にスマホに送信してくれた。以前の勤務地の冬季防災訓練に泊まり込んで取材するため購入した厚手の寝袋を納戸から見つけ出し、重ね着可能な衣類と食料を持ち込んだ。
夜にまきを燃やした火を囲み、小学同期たちと愉快に語り合えた。3人そろうのは二十数年ぶりと記憶が一致した上、キャンプ体験は防災に生きる、という考えにも全員で納得。若者の頃までに一緒にしでかした数々の失敗への見解は三者三様もの分かれで笑い合い、独りテントでは夢うつつの後、熟睡した。冒険家の知見に照らせば、小職の「生」はささやかな野営で、やや光を取り戻した。(谷)