高齢化で、65歳以上の夫婦が互いに介護し合うのが「老々介護」。厚労省の2019年の調査では、自宅介護の6割が「老々」だった。介護の担い手は24%が同居の配偶者、事業者は12%という数字もある。まだまだ先―と、詳しく考えたことはなかったが最近、身近なものであることを実感した。互いの体の不調が時期的に重なってしまったのだ。2人に残っている能力と体力、必要な作業との間に大きな不均衡のあることが分かった。老々介護も破綻も目前のことだった。
数年来、治りにくい症状と難解な病名が、身辺に増えている実感はあった。しかし、手術や入院など緊急性のある不調は少なく、何とか遠方の子どもに支援要請せずに済み、強がりを言っていた。
問題解決にめどが付き真っ先に思い浮かんだのは自分の家事無能への後悔だ。連れ合いが転勤と育児に追われて家事専業になって以降、気楽な家事無能者席に座り、調味料の置き場所も家電の操作もまったく知らない人間になっていた。リンゴの皮むきなどは自分が教えていたのに、実に情けない。台所に「燃やせないごみ」などと書かれた赤いテープが目立つ。小さな文字は私に向けたものだ。
「大丈夫?」。先日の地震直後、近所の奥さんの声掛けが心強かった。(水)