この頃は潮の香りをたっぷり含む南風が吹く。太平洋岸は親潮の上を抜けて湿った海風が来るから、まちは霧に覆われる。港の辺りでは霧笛が何度も鳴り響く。港町の風情は昭和の流行歌が詳しい。
苫小牧港が今年、開港60年の節目を刻んだ。本紙は5~12日、60周年にちなんだ連載を展開し、行政や企業、市民団体の立場から関係者に課題や将来性、目指すべき方向性を提言していただいた。
当面する課題で挙がっていたのは、港としての脱炭素―地球温暖化対策で求められる温室効果ガスの排出量と吸収量の均衡を図るカーボンニュートラルだ。政府が2050年の実現を掲げていることもあるが、国際的な貿易港としての競争力を確保するためにも対応が必要というのが複数の人の共通認識だった。既に外航船の入港数は減少傾向にあるという。
苫小牧港は背後の産業集積、北海道経済、防災の各視点から本道の生命線的な基盤だ。隣接する千歳では次世代半導体のプロジェクトが始動した。脱炭素の取り組みを進めることは、港湾と空港を備えたエリアとして国際的な競争力の強化につながる。苫小牧港周辺には再生可能エネルギーに関わる企業が少なくない。苫東地域が新時代の産業拠点を指向する上でも脱炭素の推進に期待したい。(司)