政府は1日、「こども未来戦略会議」(議長・岸田文雄首相)の第5回会合を首相官邸で開いた。「異次元の少子化対策」の実現に向け、2024年度からの3年間に集中的に取り組む具体策や財源についての考え方を示した「こども未来戦略方針」の素案を公表。所得制限撤廃など児童手当の拡充を24年度中に実施することを盛り込んだ。追加で必要となる予算規模は年3兆5000億円に上る見込みで、具体的な財源確保策は年末までに結論を得る方針だ。
政府は与党と調整した上で、今月中旬に取りまとめる経済財政運営の基本指針「骨太の方針」に反映させる。
首相は会合で「若年人口が急激に減少する30年代に入るまでが少子化トレンドを反転できるラストチャンスで、必要な施策は24年度から速やかに実施する」と強調した。
素案では、児童手当について所得制限を撤廃し、支給対象を現在の「中学生まで」から「高校生まで」に拡大。第3子以降への加算も高校生まで広げた上で、支給額を月3万円に倍増させる。高校生までの拡大に伴い、対象者が重なる扶養控除の見直しを検討課題に挙げた。
就労要件を問わず時間単位の保育所利用を可能とする「こども誰でも通園制度」は、本格実施を見据え、24年度からモデル事業を展開。高等教育費の負担軽減や、25年度からの育児休業給付率の引き上げにも取り組む。
さらに、出産時の経済的負担を軽減するため、26年度をめどに出産費用の保険適用を含めた検討を加速。子育て世帯向け住宅のさらなる確保も打ち出した。
3年間に必要となる追加予算について、政府は当初年3兆円規模を想定していたが、上積みした。財源は24年度予算編成過程で調整。社会保険料の引き上げを念頭に、企業からも負担を求める「支援金制度」の創設を検討する。徹底した歳出改革を行い、「(国民に)実質的に追加負担を生じさせないことを目指す」とも強調した。
消費税などの増税は行わない方針も示した。安定財源の確保は年度までに実現し、その間の財源不足は「こども特例公債」の発行によって補うことも盛り込んだ。
首相はこれまで、将来的な子ども・子育て予算の倍増に向けた大枠を骨太方針までに示す考えを表明してきた。素案では、28年代初頭までに「国の予算」または「子ども1人当たりの国の予算」の倍増を目指すと記載。関連予算を一元管理する特別会計「こども金庫」を新設し、給付と負担の関係も「見える化」する。