20年ぶりの感想 三上(みかみ) 剛(つよし)

  • ゆのみ, 特集
  • 2023年5月27日

  私が高専に赴任したのは、かれこれ20年以上も昔の話である。当時、独身者用の宿舎に住んでいて、近所にあった居酒屋の常連だった。苫小牧民報のコラム「ゆのみ」を初めて知ったのも、この居酒屋であった。

   「○○先生の今回のゆのみは面白かった。」「○○先生の今回の内容は難しかった。これじゃ読者は分からないよね」などと、他のお客さんたちと共に先輩教員の文章を読んで感想を語り合ったことを覚えている。その時は、将来自分も書くことになるとは全く思っておらず、好き勝手なことを言っていた。

   さて、今度は自分が批評される番だ。因果応報である。当時を自省しても猛省しても今さら手遅れだ。私のゆのみはすでに十数回掲載され、今回が最後だ(1年間読んでいただき、ありがとうございました)。これまで書いたコラムの感想を聞きたいと思う半面、聞くのは怖い。ためらいながらも、私は20年ぶりにかつて常連だった居酒屋に足を運ぶことにした。

   お店は経営者が世代交代し、常連客もすっかり入れ替わっていたが、若い頃を思い出して懐かしい店内で楽しいお酒を飲んだ。つい時間が過ぎるのを忘れてしまった。気持ちよく酔って夜風に当たりながら歩いていた帰り道、ゆのみの記事の感想を聞くことをすっかり忘れてしまったことに気付いた。「ま、いいか」。久しぶりに訪れた店は、昔と同じ雰囲気でうれしかった。お店も私も少しだけ年を取ったかもしれないが。

  (苫小牧工業高等専門学校教授)

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